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【企業法務】善意のあるやり取りでも法的リスクに――企業が整備すべき職場セクシュアルハラスメント防止体制とは

掲載日

2026/07/29

ある日、ベテランエンジニアの阿豪(仮名)は、チームで進めていた重要なプロジェクトを無事に終えました。会議終了後、同じチームの同僚である小美(仮名)のもとへ歩み寄り、「今日はいつもと雰囲気が違って、とても素敵ですね。」と声を掛け、感謝と労いの気持ちを込めて軽く肩をたたきました。
小美はその場では笑顔で応じ、特に何も言いませんでした。
ところが翌日、人事部門には小美から「セクシュアルハラスメントを受けた」との申立てが寄せられました。阿豪は大きな衝撃を受けました。本人としては、同僚を褒め、励ましただけであり、恋愛感情も悪意も全くなかったため、まさか正式なハラスメントの申立てに発展するとは思ってもいなかったのです。
このようなケースは、企業の現場では決して珍しいものではありません。
ある人にとっては何気ない冗談や親しみを込めた行為でも、別の人にとっては不快な言動として受け止められることがあります。こうした認識の違いが生じたとき、企業にとって重要なのは、どちらが正しいかを性急に判断することではなく、法令に基づいた適正な手続で対応し、従業員全員が安心して働けるルールを整備しておくことです。

セクシュアルハラスメントは「悪意の有無」だけでは判断されない

「悪気はなかった」「相手を褒めただけだった」「励ますつもりだった」。
このような説明をされる方は少なくありません。しかし、法律上の判断は、それだけでは決まりません。
台湾の《性別平等工作法》(Gender Equality in Employment Act)では、職場におけるセクシュアルハラスメントは、大きく二つに分類されています。
一つは、採用、昇進、人事評価、給与などの職務上の権限を利用し、性的な要求や言動を行う「対価型セクシュアルハラスメント」です。
もう一つは、より企業で問題となりやすい「敵対的職場環境型セクシュアルハラスメント」です。性的な言動や性別に関する発言、メッセージ、画像、身体的接触などにより、相手に不快感や屈辱感を与え、尊厳を侵害し、職場環境を悪化させるような行為がこれに当たります。
したがって、今回の事例のような外見へのコメントや身体への接触についても、それだけで直ちにセクシュアルハラスメントと判断されるわけではありませんし、「善意だった」という理由だけで問題がないとも言えません。
実務上は、双方の関係性、職務上の立場、行為が行われた状況、その頻度、職場環境など、さまざまな事情を総合的に考慮し、その行為が社会通念上、職場における適切なコミュニケーションの範囲を超えているかどうかが判断されます。
つまり、法律が評価するのは、一つの言葉や一つの動作ではなく、「全体の状況」なのです。

企業にとって本当に重要なのは、発生後の対応である

近年、企業が直面する法的リスクは、ハラスメントそのものだけではありません。
むしろ問題となるのは、申立てを受けた後に、企業が適切な対応を取ったかどうかです。
例えば、「社内で穏便に済ませよう」と正式な調査を行わなかったり、「大したことではない」と判断して放置したり、当事者同士に解決を任せたりするケースがあります。
しかし、《性別平等工作法》では、使用者は職場におけるセクシュアルハラスメントの可能性を認識した場合、速やかに有効な是正措置および保護措置を講じる義務があります。
適切な対応を怠れば、行政上の責任を負うだけでなく、民事上の損害賠償責任を問われる可能性もあり、企業の信用やブランドイメージにも大きな影響を及ぼしかねません。
そのため企業は、平常時からセクシュアルハラスメント防止規程や相談窓口を整備し、管理職・従業員に対する教育研修を継続的に実施することが重要です。
また、申立てを受けた場合には、速やかに調査を開始し、必要に応じて業務配置の見直しなどの保護措置を講じるとともに、公平・中立な調査体制を構築する必要があります。案件によっては、弁護士などの外部専門家に調査を依頼することも、公正性や透明性を確保する上で有効な方法です。
さらに、調査結果に応じた適切な措置を講じるだけでなく、制度全体を見直し、再発防止につなげることが、企業のリスクマネジメントとして極めて重要です。

制度づくりこそが、企業と従業員を守る

職場には、さまざまな価値観や文化的背景を持つ人が集まっています。
だからこそ、同じ言葉や同じ行動であっても、受け止め方は人によって異なります。
企業にとって重要なのは、問題が起きた後に責任の所在を議論することではなく、問題が起きにくい職場環境を日頃から整えておくことです。
明確なルール、公正な調査手続、そして継続的な教育を通じて、従業員一人ひとりが安心して働ける環境を築くことは、法令遵守だけでなく、企業価値やブランドの向上にもつながります。

謙立國際法律事務所(Justin & Partnersでは、企業のセクシュアルハラスメント防止規程の整備・見直し、相談・調査制度の構築、管理職・従業員向け研修の実施に加え、重大案件における外部調査委員や法律顧問として、多くの企業をサポートしています。私たちは、法令を守るだけでなく、企業の実情に即した実践的なコンプライアンス体制の構築を通じて、企業と従業員の双方が安心できる職場づくりを支援しています。
 

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